「期限は絶対、仕事は完璧にこなさなければ」
「常に忙しくしていないと、サボっていると思われそうで不安」
そんな強い不安を抱える彼女に、心身を蝕む「自覚なきワーカホリズム(仕事中毒)」の処方箋を伝えます。
安藤健(以下、安藤):Rさん、こんにちは。まずは人が仕事に情熱を感じる源泉を「推進・表現・思考・人間関係」の4つの才能動詞に分類する手法の「やりがい4タイプ診断」の結果はどうでしたか?
Rさん(以下、R):はい。仕事への向き合い方が低く、「リラックスゾーン」という結果でした。ただ、数値としてはギリギリ「ワーカホリズム(仕事中毒)」寄りになっています。
安藤:注目したいのは、仕事中の「集中力」や「気力・体力」のスコアは高いのに、「仕事の価値や意義」を感じられなくなっている点です。これは、心と体が食い違っているサインかもしれないので、ちょっと要注意ですね……。
R:実は、直前にものすごく忙しい時期があって、そこで根を詰めすぎてしまったんです。体調を崩したわけではないのですが、忙しすぎて「この仕事は何のためにやっているんだろう」と考える暇もなくなってしまいました。
安藤:今はどのような感覚で動いているのですか?
R:今はひたすら、切迫感や使命感だけで動いている感じです。でも業務内容は似たようなものが多くて、自分が成長している実感もないし、不安です……。
安藤:それがまさに「ワーカホリズム」の状態ですね。反対は「ワークエンゲージメント」といいますが、そういう人たちは「仕事が楽しいからやる」という状態です。
R:私は楽しさよりも、焦りの方が強いかもしれません。
安藤:ワーカホリズムの人は「やらなければ気持ち悪い、不快だ」という回避動機で動いています。さらにRさんの場合、「このまま同じことの繰り返しで成長できるのか」という焦りが、拍車をかけていそうですね。
安藤:自分の成長実感を感じにくい場合、おすすめの方法があります。ルーティン化した状況を打破するために、自分から新しい仕事に手を挙げてみるのはどうですか? 人は自発的な行動にモチベーションを感じやすいというデータもあります。
R:実は新しいことは好きなんです。上司にも「もっと手を挙げなよ」と言われるのですが、いざとなると、尻込みしちゃうんです。
安藤:それはどうしてでしょう?
R:「できるかどうかわからないこと」を引き受けて、できなかった時に相手を失望させてしまうのが怖いんです。完璧にこなせないなら、手を出さないほうがいいと思ってしまって。
安藤:それはもしかしたら、Rさんが、これまでの人生や成功体験で培ってきたものが原因かもしれません。
R:培ってきたもの……ですか?
安藤:はい、僕はそれを「色眼鏡(価値観)」と呼んでいます。Rさんは「仕事は完璧にこなさないと価値がない」「常に忙しくしていないとサボっていると思われる」と思っていませんか?
R:心当たりがありすぎます。大学時代も一度も授業をサボったことがなくて、「サボらない自分」が誇りでもあったんです。自分のアイデンティティというか……。
安藤:その真面目さは素晴らしいですし、これまでの成果に繋がってきたはずです。でも今は、その色眼鏡が自分の首を絞めている可能性があるかもしれません。
R:色眼鏡を変える必要がある、ということでしょうか。
安藤:はい。疲れ切っているときに「真面目すぎる色眼鏡」をかけ続けるのはしんどいものです。違う視点を取り入れることで、自分がラクになる。そういうタイミングかもしれませんよ。
安藤:ワーカホリズムの状態が続くと、最終的には「バーンアウト(燃え尽き)」してしまいます。そうなる前に、まずは「心理的な休息」をととのえる必要があると思います。
R:でも、平日はオンのまま走り続けないと、オフに切り替えるのが怖くて……。ダラダラすることに罪悪感があるんです。
安藤:その気持ちはよくわかります。だからこそ、「何もしない時間」を「サボる」のではなく、「戦略的なリフレッシュ」と定義し直すのはどうでしょう?
R:「戦略的に」休むってことですか……?
安藤:そうです。高くジャンプするには、一度膝を折りたたんで縮む時間が必要ですよね。それと同じで、適度に休んだほうが、長期的には生産性も上がりますし判断力も鈍りません。
R:休んだほうが、逆に効率がいいってことですね。
安藤:その通りです。やってみる価値は十分にあります。
R:完璧主義を少し弱めて、「仕事の最終ゴールに向かうまでの手段とか行動の幅を広げていってあげる」ってイメージでしょうか。確かにそれが、長く働いていく上では必要なのかもしれません。
安藤:とはいえ、いきなり「半日休め」というのはハードルが高いでしょう。お試し感覚で、まずは小さく始めてみませんか?
R:お試し……。
安藤:例えば、10分だけ家の周りを散歩するとか。
R:そんなことでいいんですか?
安藤:ポイントは、スマホを持たずに外に出ることです。連絡を見れば意識が仕事に戻ってしまうので、デジタルデトックスとセットが鉄則です。
R:スマホなしで散歩……。できるでしょうか……。
安藤:10分ほど連絡が取れなくても、仕事上は大きな問題にならないはずです。Rさんの場合は「リフレッシュ」することも、パフォーマンスを上げるための「業務の一部」だと思ってください。
R:業務の一部、と考えると少し気が楽になります。
安藤:Rさんはすでに規律を守る力が備わっています。今は「休むという規律」を自分に課す時だ、と捉えてみてもいいかもしれません。
R:わかりました。まずは10分の散歩から、少しずつやってみようと思います。
まとめ
無自覚の完璧主義に陥らないように、十分に自分を労わりましょう。