その秘密を探るべく、不安との向き合い方や子育てで大切にしていることなどをご紹介します。
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医学生時代、3年生の初めに行われた試験では、旅行を楽しみながらもすき間時間で「アクティブリコール」と呼ばれる勉強法で学習し、半数以上が落ちる難関試験を見事に突破したという安川先生。
しかし、ほかの医学生が勉強するなかで不安など感じなかったのでしょうか?
「試験も大事ですが、僕はそのときにインドにどうしても行きたかったんですよね。もちろん『落ちるかもしれない、勉強しなきゃいけない』といった不安はありました。だけど、最悪落ちても追試がある。『なんとかなる』という感覚はありましたし、そのときにやりたいことを優先させて旅行しました。 でも、不安や焦りを感じていたからこそ、勉強するときは濃い時間を過ごせたのかもしれない。逆にあまり勉強したくないときは、焦燥感が高まるまで待って、『焦り』を利用することはあります」(安川康介先生、以下同)
とはいえ、大きな試験の前には不安が募り、かえって集中できなくなる人もいるでしょう。
安川先生は、不安や焦りなど、自分のネガティブな感情に対処するために「ジャーナリング」という、自分の感情や考えを「書き出す」方法を取り入れています。
たとえば、なにかに悩んでいるときは、D・カーネギーの『道は開ける』(創元社)で、すすめられている以下のステップを書き出すことがあります。
1.悩んでいる事柄を詳しく書き記す。
2.それについて自分にできることを書き記す。
3.どうするかを決断する。
4.その決断を直ちに実行する。
子どもの受験など、親としては不安や焦りを感じることも多々あります。
安川先生によると、いちばん大事なのは、「絶対的な味方になってあげる」ことです。
「日本の場合は偏差値で、ほかの子と比べられることが多いと思います。ですが、『偏差値=その人の頭のよさ・価値』と親が考えてしまうと、子どももそういう価値観を持った変な大人になってしまう。そういう偏った価値観はもたずに、他人とあまり比較しない価値観をもちましょう。 不安を感じている人に『不安になっちゃダメだよ』とか言っても効果がありませんよね。大人が『落ちても死ぬわけではない』くらいのおおらかさをもってあげた方がいい。学力がすべてではないですし、その人の一面にすぎません。子ども自身を受け入れて、味方になってあげてください」
受験に限らず、人と比べてしまい、不安や卑屈になってしまうことはだれにでもあること。しかし、安川先生は物事に対して「費やした時間」よりも「やり方」が重要だと考えています。
「勉強は時間だけをかければいいものじゃないと僕は思っています。でもそれはほかのことも同様ですよね。たとえばわが家は、妻がすごく忙しいので、僕中心で子どもの面倒を見ていますが、洗濯ものや料理などの家事はすき間時間を使ってうまく回しています。その『やり方』や『時間の使い方』が非常に大切だなって思います」
現在、アメリカで家族4人暮らしをしている安川先生。7歳の息子さんと10歳の娘さんの子育てで大切にしていることは、「子ども扱いをするのではなく、1人の人格を持った個人として接すること」と話します。
「昔は子どものことをよく分かっていなくて、息子と衝突したこともあったんです。お互い引き下がりませんでしたが、彼の意見を尊重してあげたらラクになった。やっぱり大人でも、やりたくないことはやりたくないじゃないですか。その気持ちは子どもも一緒だと思うので、個を大切にするようになりましたね」
「なぜ?」「どうして?」という質問にきちんと全部答えるようにしているそうです。しかし、質問に答えられなかったときに「なんで知らないの?」と言われたら、少しひるんでしまいそうな気もしますよね。
「子どもに親、大人だから全部を知っているっていう訳ではないことを理解してもらうことも大切です。それを説明しても僕はいいと思いますよ。逆に子どもしか知らないことを教えてもらったら、『教えてくれてありがとう』って言い、わからない場合は『一緒に調べようか』と言って調べる。無理に完璧を演じる必要はないですね」
「子どもは大人が思うよりも、非常に深い考えをしている」と語る安川先生。子どもの気づきからハッとすることも多々あるそうです。
「子どもは教えるとすぐに全力で吸収する。僕たちも昔は子どもだった。だけど、そのときの『世界が新鮮に見える』『摩訶不思議』みたいなものを大人になると忘れてしまいますよね…。その感覚をもっている子どもになにかを教えられる、自分もその感覚を思い出すっていうのは、すごく貴重な体験だと思うんです。だからそういう機会はすごく大事にしています」
そして、子どもがいい質問したときには「よくそういう質問考えたね!」と、すごくほめるようにしているそうです。
「ほかの子どもの面倒も見ることはありますけど、子どもってやっぱり天才なんです。その好奇心や発想力、感性、クリエイティビティは大人がなるべく邪魔しないように育てるのが理想だなと僕は思います」