ただ、美容液や化粧品で外側からいくら磨いたとしても、腸内環境が悪化し続ければ、内側から若返ることは期待できないのです。
見た目年齢を若返らせることは、腸のエイジングケアが基本となるようです。
今回は、医師が教える若返りの食習慣と、控えるべき食品の見極め方を腸内環境を若く維持するという観点から深掘りしてきます。
中年期の40~64歳に入ると体の衰えを感じるようになりますが、実は老化は青年期から始まっています。
さらに、スタンフォード大学の研究チームがヒトの血漿たんぱく質を分析したところ(Nature Medicine volume 25, pages1843 1850 (2019))、老化は一定のペースで進行するのではなく34歳の青年期、60歳の壮年期、78歳の老年期で急激に進行することがわかりました。
急激な老化を避けるためにも、日頃のエイジングケアは20~30代から始めても、早すぎるということはありません。
老化は美容面のダメージだけでなく、体力やメンタルの衰え、病気にもつながり、長い生涯の生活の質を落すことにつながります。
同じ年齢でも元気で若々しい人、実年齢より老けて見える人がいます。
老化のスピードには個人差があり、実年齢(時間の経過)とは別に生物学的年齢(体の年齢)という考え方が注目されています。
ニュージーランド人を対象にした研究(Nature Aging volume 1, pages295 308 (2021))では、顔の見た目が老けている人は生物学的年齢が進んでいる、つまり体の中の老化が進んでいることがわかりました。
体の中の老化を食い止めるには、腸がカギを握っています。
腸内フローラが整っている人は腸が若く、生物学的年齢も若いことがわかっています。
生物学的年齢=腸年齢といっても過言ではないほど、腸と老化には密接な関係があります。
2017年から、京都府立医科大学 COI プログラム「京丹後長寿コホート研究」では、京都府京丹後市の高齢者を対象に、腸内細菌を調べる研究を行っています。
京丹後市に在籍する100歳以上の長寿者は、全国平均の2.7倍、長寿地域として知られています。
京丹後市の長寿者の腸内細菌を調べてみると、酪酸菌が多いことがわかりました。
酪酸菌というのは、酪酸を産生する菌のことで、老化防止に重要な役割を果たしていることがわかっています。
腸内細菌は食べ物の影響を強く受け、特にたんぱく質と食物繊維の摂り方が影響します。
京丹後市の高齢者は、たんぱく質を大豆を中心に魚、卵、鶏肉で摂っており、また、発酵食品も日常的に摂っていることがわかっています。
腸を若返らせるためには腸内細菌の多様性を高くし、腐敗菌の働きを抑えることです。
菌の種類が多いほど、いい菌が棲みやすい環境をつくります。
菌のバランスは食べ物で決まります。
腸を若くするには「まごわやさしいよ」をキーワードとして覚えておき、食材選びをするといいでしょう。
「ま」豆類・大豆食品
「ご」ゴマ
「わ」ワカメ
「や」野菜
「さ」魚
「し」しいたけ・キノコ類
「い」いも
「よ」ヨーグルト
【腸が老ける食材】
レッドミート、砂糖が多い食品、高脂肪食
腸内にいる微生物を腸内細菌といいますが、微生物はこの世界の中のあらゆるところに存在します。
発酵食品は、この微生物の働きを活用しています。
体によい働きをする物質を作り出すのが「発酵」、悪い物質をつくりだすことを「腐敗」といいます。
発酵の段階で体にいい物質をたくさんつくっているので、発酵食品は健康に寄与するといわれています。
また、発酵によってうまみが増し、食べやすくなることも発酵食品の利点です。
近年の研究で発酵食品に含まれる成分が、直接腸内環境に働きかける、腸内細菌のエサになる、腸内細菌の多様性をもたらして腸内フローラを変えるということがわかってきました。 発酵食品は腸活にはかかせない食品となっている理由です。
「京丹後長寿コホート研究」に参加している高齢者の40%がヨーグルトを食べています。
ヨーグルトは腸活に欠かせない食品ですが、欧米の食文化である乳製品は、本来は日本人の腸内環境に合いにくいのです。
牛乳には乳糖という成分が含まれていますが、日本人の多くは乳糖を分解する遺伝子を持っていないため、乳糖不耐の症状が現れることがあります。
日本人にビフィズス菌が多いのは、乳糖を分解する遺伝子を持っていないためではないかという説もあります。
日本人の腸に合っているという点では、大豆由来など植物性のヨーグルトは、たんぱく質や食物繊維などの栄養を摂れるので、腸を若返る食材としては大変優秀です。
100年前、米国のウイリアム・オスラー博士が「人は血管とともに老いる」という有名な言葉を残しました。
動脈硬化は血管の老化の代表ともいえる状態ですが、腸内環境と動脈硬化には密接な関係があります。
近年腐敗菌がつくる物質TMAOTMAO(トリメチルアミン N オキシド)が動脈硬化の起因や進行に関わっていることがわかっており、ヒトによる研究(N En gl J Med,368:1575 1584,2013)でもTMAO が血中に多いと心疾患のリスクが高いと報告されています。
TMAO は慢性腎臓病の誘因や悪化にもつながっており、腸の老化があらゆる臓器に影響していることがわかっています。
まとめ
腸の若返りは20~30代から始めて、ミドル~シニア世代まで継続していきましょう。