多くの方はその原因を「やる気がないから」「メンタルが弱いから」ではなく、自律神経が乱れているからと考えます。
そして、食事や運動、入浴などさまざまな方法を試すのですが、それでもなかなか改善しません。 それは、不調が「自律神経だけ」の原因ではないからです。
今回はこういった「なんとなくしんどい毎日」から抜け出し、自律神経を無理なく整える方法をせたがや内科・神経内科クリニック院長で医学博士の久手堅司氏著書『自律神経 これ1冊ですべて整える』よりわかりやすくご紹介していきます。
ここ最近の日本の気象は大きく変化してきています。
夏から秋冬にかけては、寒暖差の大きい日数が続き、身体の冷えを訴える方が増えています。
一日の冷えをとり、座りっぱなしの姿勢などで滞った血流を改善してくれるのが、入浴です。
湯船に浸かることは、身体を温め、冷えをとる、水圧により全身の血流が良くなる、水の浮力で身体が楽になる、心身がリラックスする、眠りやすくなる、など多くの効果があります。
入浴を習慣づけるだけで、体調は変わってくるのです。
大切なのは、入浴のタイミングです。
入浴をすると副交感神経が優位になるので、それだけでも安眠効果がありますが、さらに深部体温(脳や内臓など身体の内部の体温)の変化をうまく活用すると、より良質の睡眠がとれるようになります。
人の体温には日内変動があります。
就寝中の午前3~5時が最も低く、朝起きてから少しずつ上がっていきます。
午後5~6時が最も高く、その後徐々に下がっていきます。
このように、1日のなかでも交感神経が優位のときは体温が高めで、副交感神経優位のときは体温が低めなのです。
眠くなるのは、深部体温が下がっていくときです。
入浴をすると、深部体温が0.5~1.0℃ほど上がります。
そして、お風呂から出て約90分後には、深部体温が0.5~0.7℃くらい下がっていきます。そのタイミングを利用して眠りにつくと眠りやすくなり、睡眠が深くなります。
入浴時の重要なポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
1.お湯の温度は38~41℃程度
42℃以上の熱いお湯は交感神経が優位になるのでおすすめしません。
2.入浴時間は10~20分
首まで浸かる全身浴をおすすめします(半身浴なら20~30分)。
3.就寝の90~120分前に入浴を済ませる
入浴と睡眠はセットにして考えると、心身の回復に大きく役立ち自律神経も整います。まずは湯船に浸かってゆっくりするだけでも試してみてください。
自律神経とうまく付き合っていくうえで大切なのは、首のケアです。
首のこり予防、首の冷え対策をするとよいでしょう。
首や肩のこりにお悩みの方が多いように、首と肩は、こりや痛みが出やすい場所です。
首は細くて筋肉が少ないですが、5kg前後もある重たい頭を支えており、大変大きな負担がかかっています。
特に、首が前に出ている姿勢や、うつむいているときなどは、首には通常の3倍程度(15kgほど)の負荷がかかります。
首には重要な神経が通っており、自律神経もそのひとつです。
首の筋肉が緊張して血行不良になっていると、その影響は自律神経の乱れだけでなくさまざまな体調不良の原因にもなります。
自律神経失調症や原因のわからない不調に悩まれている方や気象病の方は、診察をしてみると首肩の緊張がかなり強くなっており、動きが悪くなっているケースが多いようですが、患者さんは首の緊張状態が慢性化していて、自分の首肩がこっていることにすら気がついていないのです。
首を温めて、筋肉の緊張をゆるめると、副交感神経が優位になり、心身のリラックスにつながります。
首には太い動脈が通っているため、温めると全身の血流も良くなり、ポカポカしてきます。
首は露出していることが多い分冷えやすいので、日常からケアをしてあげましょう。
首を温めるおすすめの方法としては、
2.マフラーやネックウォーマー、ストールなどを活用する(日頃から持ち歩くようにしましょう)
3.湯船に入って首まで浸かる
などがあります。
寝ているときは、首が布団から出ているので、首は冷えやすく、それが不調の原因になることも多いので、朝起きたらすぐにホットタオルで首を温めると、寝ている間の首肩こりがすっきりして気持ちよく一日をスタートできます。
暑い時期でもエアコンの影響で首が冷えて緊張しやすいので、季節に関係なく首のケアは大切にしましょう。
環境や状況にあわせて、首を温める方法を選んでみてください。
体調不良の方は、食事がうまくとれていない、寝込んでいて水分をとる余裕がない、ストレスで発汗の量が多いなど、さまざまな要因で脱水ぎみの状態になっていることが少なくありません。
不感蒸泄(ふかんじょうせつ)という言葉があり、これは、汗をかくこと以外の、皮膚や呼吸からの水分喪失をいいます。
健康な成人の場合、常温の環境下・安静時には、皮膚から約600ml、さらに呼気からは約300mlの水分を一日で失っています。
寝ている間は水分をとらないので、睡眠時間が6~8時間だとすると、朝の起床時には身体は脱水状態になっています。
自律神経が乱れていると寝汗をかきやすいため、余計に水分を欲しているかもしれませんね。
そこで起床後におすすめしたいのが、コップ一杯の常温の白湯(さゆ)を飲むことです。
できれば10分くらいかけて、ゆっくり飲みましょう。
朝、白湯を飲むメリットとして
1.自律神経のスイッチがうまく切り替えられる
自律神経は大きな変化を苦手とします。「眠りから覚める」ということは、自律神経にとっては大きな変化となります。寝起きにダッシュをしているような感覚です。
そのため、ゆっくり時間をかけて心身を目覚めさせることで、自律神経にかかる負担を減らすことができます。
2.胃腸の動きを活発にする効果
寝起きの時点では、体内は脱水だけでなく冷えている状態でもあります。
白湯を飲むことで内臓を目覚めさせ、食欲が出たり、消化機能が高まったりします。
3.便秘解消効果
胃だけでなく、腸の動きも活性化されます。
また、水分を補給することで身体が潤うと便にも水分が行き届いて柔らかくなるため、排便習慣が整うようになります。
4.デトックス効果
水には、体内で作られた老廃物を排出するはたらきがあります。水分補給がなされると、血液やリンパの流れが良くなり、むくみの解消にもなるでしょう。
そして、白湯は温かい飲み物なので、体内が温まることによりさらに血行が良くなるため、デトックス効果も高まります。
5.基礎代謝をアップさせる効果
内臓温度が1℃上がると、基礎代謝が10~20%よくなります。
朝に白湯を飲むと、身体全体を温めることができます。代謝が上がれば身体全体のはたらきが良くなります。
白湯の簡単な作り方としては、電子レンジでにマグカップに入れた200mlの水を、500~600Wで2分くらい温めるだけです。
毎朝の習慣にできるとよいですね。
まとめ
夏が長く、春と秋は短くなっていると実感しますが、特に夏から秋、冬へ移る今頃の時期は寒暖差が大きくなり体調を崩しやすくなります。
その不調の大きな原因となる自律神経の整え方をを生活の中で無理をせず行っていれば、快調に過ごせる日が増えることを期待できそうです。