その際に聞かれることを予想して回答を用意するだけでなく、面接官から「質問はありますか?」と聞かれたときに備えて、質問を準備するのも当たり前になりつつあります。
しかし、一見「何でも聞いてください」と逆質問をしてくる企業側のカジュアル面談の増加により、トレンドが大きく変わり、そのために足元をすくわれて自滅する求職者が増えているらしいのです。
今回は、今どきのカジュアル面談の落とし穴についてご紹介したいと思います。

コロナ禍によりモートワークが推み、中途採用市場にも少なからず影響を与えています。
今や求職者の面接はオンラインが主流となり、面接のたびに会社に訪問する必要がなくなったことで応募のハードルもグッと下がりました。
企業側も、より多くの人材にアプローチできるよう、正式な選考に進む前にお互いの理解を深めるための「カジュアル面談」を設けるようになりつつあります。
結果として、コロナ禍以降の転職市場においては、求職者1人が応募する企業の数は増加傾向にあります。
こうした昨今の転職市場で、求職者を困惑させていることのひとつに「『逆質問』の変化」があります。
「逆質問」は、面接の最後に「何か質問はありますか?」と問われるのに対して答える、求職者から企業側への質問です。
おそらく、「逆質問のために、2~3の質問を用意しておく」という認識を持っている方が多いのではないでしょうか。
しかし実は、こうした従来の面接の常識が通用しなくなり、残念な結果に終わってしまう30代、40代のビジネスパーソンが増えています。
質問の仕方には、人間性や価値観はもちろん、ビジネスリテラシーや仕事に対する視座、そして転職の真の目的が表れます。
以下で、逆質問の内容で足元をすくわれ失敗した転職者の事例と攻略ポイントをご紹介します。
30代金融業界出身のAさんは、より裁量の範囲が大きな仕事を求め、WeB業界へのキャリアチェンジを目指して転職活動中をしています。
登録中の転職サービスに、とあるメガベンチャーの企業から「カジュアル面談」のお誘いがあり、まずはその会社のことを知りたいと考え、受けてみることにしました。
カジュアル面談は、人事採用担当からの「今日はざっくばらんに何でも聞いてくださいね。何か質問したいことはありますか?」という質問で始まりました。
「まずは会社の説明があるのだろう」と考えて質問を何も用意していなかったAさんは、困惑してしまいました。
「今日は、選考ではないので何でも聞いていただいて結構です。Aさんの疑問にお答えしたいと思います」
面接官からの予期せぬ言葉に、Aさんはしどろもどろになりながら業務内容や会社の方針、働き方を質問しました。
しかしどの質問も、答えはホームページに記載されているような、表面的なものばかりになってしまいました。
その後、正式に応募したのですが、結果は書類選考で落とされました。

近年増加傾向にある「カジュアル面談」は、面接などの選考の前段階で行われるもので、文字通り「カジュアル」に双方のことを知るための情報交換の場です。
必ずしも応募意思があるかどうかは問われないので、企業側が応募者に向けてアピールすることもありますが、一方で、人となりを判断されて、気付かないうちに企業側から評価されている可能性もあり、実は、気が抜けない場でもあるのです。
カジュアル面談といえども、「企業からの説明を受け身で聞くだけの機会」と捉えているようでは採用の土俵に上がることができないのがミドル転職です。
逆質問だらけの面談となる可能性もあるので、事前に抜かりなく企業研究した上で臨むことが最低限のマナーと言えそうです。
40代メーカー勤務のBさんはIT業界への転職を希望し、ある企業の面接に臨むことになりました。
面接で想定される質問について回答例を検索して準備し、逆質問も10個以上用意して「カジュアル面談」備えました。
特に意外な質問はなく、聞かれたことにスムーズに回答していき、そして最後に「何か質問はありますか?」と聞かれたので、「現在のIT業界の課題はどのようなところにありますか?」と質問しました。
すると、面接官から、予想外の言葉が返ってきたのです。
「Bさんはどう思いますか?」
まさかの逆質問返しに、頭が真っ白になってしまったBさん。
新聞やネットニュースで見聞きした話題で何とか乗り切ろうとしましたが、思考の浅さが相手に伝わっていることが自覚できるレベル。
時折面接官が投げかける質問の意味を理解するのも難しく、何とか話を合わせようとしましたが、相手の表情がみるみる曇っていくのがわかるほどでした。
残念ながら、Bさんは次の段階に進むことはできませんでした。
面接は一問一答の試験ではなく、面接官との対話をする場です。
想定して用意してきた質問を投げるだけでは不十分で、「自分の意見を持っておく」ことがビジネスパーソンの基本です。
Bさんは、転職対策として新聞アプリの定期購読を申し込んでいましたが、申し込みをしただけで満足し、ほとんどビジネスの記事を読んでいなかったのです。
今さらながら芸能ニュースばかり読んでいたことを後悔するBさんでした。
もう一つ、カジュアル面談の落とし穴にハマってしまった例をご紹介します。
老舗の広告代理店で営業部長をしていた30代男性のCさん。
Web系のメガベンチャーへ転身するため面接に臨みました。
経験も実績も申し分なく、おそらく採用されるだろうと自信を持っていましたが、そんな中で迎えた最終面接の逆質問で、Cさんは何気なく「御社の男女比はどのくらいですか?」と質問しました。
すると面接官は「どうして男女比が気になるのですか?」と聞き返してきました。
Cさんが、前の職場では女性が少なかったことを伝えたところ、面接官はけげんな顔をして「当社の男女比率は半々です。前の職場で何か問題があったのですか?」と、さらに質問の意図を追求してきました。
実はCさんは内心「女性が多い職場は苦手で面倒だ。極力マネジメントはしたくない」と思っていたのです。
それを正直に伝えると心証を悪くする恐れがあると考え、何とかごまかそうとしたのですが、そうしたCさんの動揺は相手にしっかり伝わってしまったようです。
面接が始まった時とはうって変わって、硬い表情でメモを取り始めた面接官の様子に、Cさんはイヤな予感を抱えながら面接会場を後にしました。
結果は不採用。
「当社のカルチャーと合わないと判断しました」とのコメントが添えられていました。
実は、面接官が気にしているのは、質問の中身よりも、その質問をする意図や人間性の部分なのです。
直接「なぜ、その質問をするのですか?」「それを聞いてどうするのですか?」と、聞かれることがなかったとしても、面接官の頭には常にこの質問が浮かんでいると思ってよいでしょう。
Cさんの場合もそうでした。最後の逆質問で、その意図を突っ込まれ、マネジャーとしてのダイバーシティの意識に疑問符がついてしまったようです。
ジェンダー平等やハラスメント対策に厳しい目が向けられる昨今では、10年前までは当たり前とされていた価値観が問題視されることもあります。
Cさんの場合も、最後になって、そうした懸念を持たれてしまったのかもしれません。

企業研究をするときは、ホームページに書かれた企業理念や事業紹介を読み込んだり、求人サイトやコーポレートサイトの社員インタビューに目を通すことはもちろん、会社代表や面接官の名前で検索してみたり、取材記事やプレスリリースなどに目を通しておくことは基本中の基本です。
こうして相手企業の情報に触れることで、自然に聞きたいことが生まれてくるのです。
転職エージェントやキャリアコンサルタントとの、面接の予行演習も役立ちます。
逆質問は、単に「知らないことを聞く」だけのものではありません。
時には質問に対する回答よりも、相手企業や業界への理解の深さや、仕事に対する姿勢が伝わってしまう重要なものです。
相手からの質問に答えるだけでなく、こちらからも質問を投げかけて対話を重ねることで、より自分の魅力を相手に伝えることができますし、相手企業の理解も深めることができるはずです。
「どんな面接でも攻略できる」といった万能薬はありませんが、一番重要なことは事前準備を丁寧に行い、怠らないことです。

まとめ
しかし、社会に出るとなかなかその時のような熱量を持って準備をするのは難しいかもしれません。
中途採用の面接で失敗しないためには、自分の経験を過信せず、転職したい企業研究や業界研究をしっかり行って知識をインプットしておき、スマートな「逆質問」ができるような準備が大切です。